住宅

家の記憶  by奥村

私達がいつも建築パ-スをお願いしている画家がいます。建築パ-スとは建物の完成予想図のことです。この画家はCGが主流になった今でも、手描きにこだわり描き続けています。手描きの良さはCGに比べて暖かみがあり、何か心に響くものを感じるところです。通常私たちはこの建築パ-スで建物の完成した姿をビジュアライズしてお客様が見たり、自分たちで設計上問題がないかなど確認するために使用します。

 

ある日この画家さんが一枚のパ-スを見せてくれました。(①の絵)田舎風景に佇む一軒の家が描かれた絵でした。その絵に思いを巡らせると、なにかもの悲しい懐かしさがこみ上げてきました。きっと自分が昔住んでいた家での暮らしを、その絵を通して心に写していたのかもしれません。絵には写真とは違った人に訴えかける力があります。

実家の建て直しやリノベ-ションするお客様にとって、生まれ育った家が無くなるのは本当に寂しい事です。今のライフスタイルに合うように仕方なく家を壊す訳で、家が嫌いだからという理由では決してないからです。その記憶を絵に残した方が良いのではないかと思ったのです。人は肖像画を描いて子孫へ残します。絵は写真よりも格調や内的表現ができるからだと言われています。同じように家を絵で残す方が良いのかもしれません。何故ならば先ほど述べたように、手書きの建築パ-スは不思議と見る方の心に響くものがあるからです。

 

画像は実際にペンとマーカーのみで描かれた家の絵なのですが、これを一見するだけでここに住まわれていたご家族の生活風景が心に響いてきます。絵は人というフィルタ-に通して描写されるので心を写してくれると思います。思い出の記憶としてご自宅を絵に残してみてはいかがでしょうか。

スタッフコラム一覧へ