住宅

「湿式」と「乾式」 by奥村

建築の仕上げには「湿式工法」と「乾式工法」があります。

 

「湿式工法」はモルタルや漆喰などを水で混ぜた材料を壁に塗ったり、それを下地にタイルを貼ったりする工法です。つまり湿っている材料を使い、乾かしてつくる工法です。

一方「乾式工法」とは、字のごとく乾いた材料を使う工法です。例えばあらかじめ工場で製作されたパネルや合板を釘やビスなどで取り付ける方法です。乾式工法は、乾かす時間や出来上がった材料を貼るだけなので手間も省けるため最近の建物、特に住宅の殆どは乾式工法でできています。

よって昔の家のように土壁や漆喰を塗る家も随分少なくなり、土壁がサイディングに、漆喰がビニ-ルクロスに変わり、瓦屋根も土をのせない金属屋根が主流になりつつあります。

写真は先日訪れた大阪市に建つ日本綿業倶楽部の建物です。重要文化財に指定されていて1931年(昭和6年)に竣工されました。

モルタルや漆喰で造形された壁や天井、タイルのタペストリ-など約87年前に竣工されたとは思えないほど、その華やかさと豪華さが、より味わいが深まり残っています。もしこれが乾式工法のビニ-ルクロスやサイディングでできた建物だとしたらこのような状態で残すことは不可能だと思います。

実は世界の名建築と言われるものの殆どは湿式工法でできています。湿式工法は人間の手によってつくられます。それだけ善し悪しが職人さんの腕にかかってきます。そこにはものづくりに対する思いが100%込められるといっても過言ではありません。決して乾式工法が悪いわけではありません。軽量化による耐震性のアップや品質の均一化、工期の短縮など建築にとっては絶対に必要な工法です。でもどこか手の跡が残るものづくりを心掛けていきたいと思います。

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