住宅

暮らしって by奥村

「建築とはそれを生み出す作り手の挑戦であると同時にそれを使い育てていく使い手の挑戦でもある。」これは建築家・安藤忠雄氏の言葉です。家はつくり手にどう作ってもらえるかはもちろんですが、実は能動的に住み手がどう考えて住むかということの方が大切なことです。

 

最近、「自分らしい暮らし」という言葉をテレビや雑誌でよく目にするのは私だけではないと思いますが、「自分らしい暮らし」とは言うまでもなく住み手に決定権がないと実現できません。例えば部屋が細かく間仕切りされて、ここは食事する部屋、くつろぐ部屋、勉強する部屋、寝る部屋と決められたならば、住み手は家に合わせた生活を余儀なくされます。一方、とても広い一室の部屋を住み手が思うままに変化させることができれば、自分でカスタマイズしながら暮らせます。また壁がキャンパスだと自由に絵を描けるが、綺麗なクロスが貼ってあれば、それを汚さないようにすることを緩く義務付けられてしまいます。つまり住み方にどれだけ住み手のエッセンスを盛り込むことができるかで自分らしさの度合いも変わります。DIYもエッセンスを盛り込む方法の一つだと思います。ライススタイルの変化といえば10年・20年のスパンになりますが、季節ごとに変化させるくらいのフレキシブルさがあってもよいでしょう。冬は南のリビング、夏は北側のリビングといった感じで。

最近では機能性だけが家ではないということにすでに気づかれている方が多いと感じます。家は必要な機能があれば、その他は完全につくり込まないで、能動的に後できることは残しておく方が楽しく豊かに暮らせのではないかと思います。

 

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