住宅

家族の居場所づくり by奥村

寒さが厳しくなると、こたつに家族が集まって蜜柑を剥きながらテレビを見た。一方こたつの中では兄弟で足の蹴り合いが繰り広げられ、陣地獲得のための競り合いを小さい頃はよくしたものだ。

居間には真ん中に一つの机さえあれば、家族でその場所を共有して団欒したものだが、現在の過ごし方は少し変わってきている。家族は同じ空間にいるものの、それぞれが好きなことをして過ごす時間が多くなってきている。  

私の家族も同じで、全員が同じテ-ブルに集まるのは食事の時だけ。それ以外は子供たちも私たち夫婦もそれぞれ好きなことを違う場所で楽しんでおり、特定のテレビ番組を家族全員で見るということさえ殆どない。けれども家族の会話がない訳ではなく、きちんとコミュニケ-ションは図られているのだ。

今までの設え方はリビングの一番いい場所にテレビがあって、それに向き合って応接セットやテ-ブルが配置され、いわゆる居場所がテレビに向かって固定されてきた。しかし今はスマホやタブレットがあり、特定な場所に縛られることなく楽しめるようになった。しかし個室に入ってしまうとなんとなく淋しいので、リビングだけでなくダイニングや時にはキッチンでそれぞれが適度な距離を保ちながら自分の居場所を定め、空間を共有しながら過ごしているのだ。

つまりテレビの前だけでなく、それぞれが座る場所さえあれば、そこで好きなことができる方が居心地良い。だからLDK全体が、家族のくつろげる居場所として機能できる工夫が必要になってくる。例えばキッチンの作業通路の幅は従来90cm程度だが、少し広めに1m10cmにして、そこに椅子を置いてお母さんの場所にしたり、階段を広くして座れる場所をつくったり、吹き抜けにワークスペ-スをつくるのもよい。家具も応接セットよりパ-ソナルチェア-で、居場所が自在に変えることのできるコ-ナ-をたくさんつくればよいのである。

暮らし方の変化により、部屋の在り方や家具の選び方も変えていくことも居心地の良さにつながるのではないかと思います。

 

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