住宅

住みながら工事現場 by奥村

当たり前ですが、家に住むのは設計者ではない。設計に全てを尽くしてしまえば、お客様はその家に合わせて住み続けるほかなくなる。それよりもお客様自ら住みながら考え作れることができるとすれば、また基本機能さえあれば、残りの工事を住み手に残しておく方法もきっと楽しいのではないか。そんな思いで9年前に自宅を建て、未完成の状態で住み始めた。

壁や天井は合板のまま、梁はむき出し。初めから全てを設えるのではなく、入居後時間をかけて自分たちが好きなように創り加えていく。それまでDIYに全く興味なかったがやり始めると意外に面白く、将来子供部屋として設けた一部屋は、DIYの工房に利用している。工具もどんどん増えて一通りの加工が我が家でできるようになった。

又、今ではインターネットやホ-ムセンタ-で建材も簡単に調達できDIYをする環境はずいぶん整ってきているし、DIYブ-ムでTVや雑誌などでやり方やアイデアも得やすい。

私たちを含め建築業者はとにかく均一に綺麗に仕上げる努力をする。一方DIYは、悪い言い方をすればその「ヘタクソ感」がプロでは表現できない味わいと面白みのある唯一無二のインテリアに仕立ててくれる。同時に自分の手の跡が残るものには愛着もわく。最近トレンドのブルックリンスタイルはまさにゴツゴツしたレンガやエイジング塗装、シャビ-な木の風合いなどDIYを重ねたビンテ-ジ感も人気の理由だ。

家具や棚など必要と思うものを住みながら工事をしていくことが、ライフワークとなり楽しさのひとつにもなるのではないだろうか。そんな部屋が一つや二つあってもよいのではないかと思う。

 

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